~Lion Kiss~
……ダメ、怯んじゃダメ。

私は気持ちを奮い立たせると、治人さんを正面から見据えて微笑んだ。

「ご婚約おめでとうございます」

瞬く間に治人さんの顔が歪んだ。

『裏切ったお前に祝ってもらいたくなんかない』

とでも言いたいのかも知れない。

「また近々、残りのものを取りに伺います」

「ねえ、マヒル、話があるんだ」

「……なに」

「ここじゃ話せない。部屋に戻って」

治人さんは切り返すように言って、私の手を掴んだ。

ビクンと身体がすくんだ。

「私には、ない。……離して」
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