~Lion Kiss~
私は内心舌打ちした。

脳裏に、八木麻里のバッサバサした扇子みたいな睫毛が蘇った。

『来週、彼と温泉旅行なんだあ!』

とか言ってたよな、確か。

ちきしょう、あのアマ。

仁王立ちで空を睨み据える私に、恐る恐る社長が問う。

「なあ、そんな般若みたいな顔しないでさあ。今回はアメリカから農地開発の視察団が来るんだよ。俺、そんなに英語が得意じゃないし」

ウソつけっ。

毎日英字新聞読んでるでしょーがっ!

私はぞんざいな眼差しを社長に向けて口を開いた。

「社長。わが社はショボいながらも貿易会社ですよ?」

「こら、ショボいとか言うな!」

私は社長の抗議をスルーして続けた。
< 32 / 444 >

この作品をシェア

pagetop