~Lion Kiss~
……いや、違うけど。

どう見たって目の前の男性は温泉旅館の若旦那ではない。

私はにっこりと微笑んだ。

「……違います」

「ではお名前を伺ってもよろしいでしょうか」

切り返すような男性の言葉に僅かに心拍が上がる。

「まずそちらからどうぞ」

「チッ」

きゃあ、舌打ちされたし!

眼を見張る私を一瞥すると、青年は上着の内ポケットから何かをスッと取り出して、私に見せた。

「この件について……お話があります」

私は更に凍り付いた。
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