~Lion Kiss~
その瞬間、涙が頬を伝った。

ダメだ、早すぎる。

もう少し我慢しなきゃダメでしょ。

けどもう遅くて、理沙子さんは私を見て息を飲んだ。

「藤吉さん……」

「ご、ごめんなさい、失礼します」

身を翻して、私は思いきり駆け出した。

開いたままだったシャッターから外へと出て、涙を拭いもせずに駅を目指した。

「おい!」

來也の弟が追いかけてきたけど、私は振り向かなかった。

二種類の靴の音が辺りに響き、やがて私は追い付かれて腕を掴まれた。

「はえーな、あんた。陸上部かよ」
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