君とのキスの意味
大役を終えて、俺は大きく息を吐いた。そんな俺を見て、雪乃さんが眉尻を下げて笑った。

「塚本さんには、本当に無理なお願いをしてしまって・・・ごめんなさい！」

座っている膝につきそうなほど頭を下げる。

「あっ、気にしないで！なんか、わざとらしくって、ごめん！」

雪乃さんは、フルフルと首を振った。

「でも・・・塚本さんにお願いしてよかった。加賀君の本当の気持ちに、気付いてもらえた。ありがとうございます」

今度は、俺が首を振る。

「雪乃さんも加賀さんも“ 当事者 ”だから・・・どうしても冷静にみられなくて、わからなくなる事もあるよ。もし自分の事だったら、俺も・・・」

そんな風に苦笑しながら言えば、雪乃さんが小首を傾げて俺を見た。

「塚本さんにも『冷静にみられなくて、よくわからない事』があるの？」

「っ！いやっ！ないよ！そうじゃないかな～って！ハハッ！」

自分がどれだけ不自然な笑みを浮かべているかも気付かず、とりあえず笑ってごまかそうとする。

雪乃さんは薄く笑って、それ以上は何も言わなかった。

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