白と黒のコーヒータイム
とりあえず近すぎる距離に冷静ではいられない。

だがこの状況に文句をつけるとしたら確かにその言葉がピッタリ合いそうだと無意識に何度も頷いた。

それに間違いないと。

「そ、そう!そうだと思うけどっ…近いって!」

「じゃあ俺がこういう強引な事すると国見は俺に惚れる訳だ?」

捕まっていない腕で必死に顔を隠して抵抗する中、予想もしない言葉が聞こえて国見の動きは止まった。

「…はい?」

「国見の言い分を聞いてると俺に足りないのは強引さだけだろ。それを補ったら国見は俺に惚れるって事じゃねえの?」

「…は?」

思わず聞き直した事が失敗だったらしい。

眉を寄せてより距離を詰めてきた名村の顔はすぐ目の前まで迫ってきた。

いや待て、これは一体どういう状況だ。

「何言ってんの?」

この状況からだと冗談にしては行き過ぎている。

何がしたくて何を言いたいのか国見にはさっぱり分からなかった。

ちょっと離れて、そんな意味を込めて空いている方の手で名村の胸を押して抗議したが、それが返って裏目に出てしまった。

距離をとろうとした手もとられて呆気なく捕まってしまう。

両手を奪われた今、何故か国見は逃れられない何かを覚悟して息を飲んだ。

名村が何かを告げようとしている、それを聞かない限りここからは逃げ出せないのだ。

そんな予感がして無意識に首をすくめた。

「国見、最初に言っとくけど。」

「な、なに。」

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