白と黒のコーヒータイム
だって相手は名村だ、永遠の親友とまで思っていた名村だ。

そんな相手とこんな場所で我を忘れて求めるなんて予想できただろうか。

「…優子。」

低い声で呼ばれて国見の肩が跳ねる。

「そう、呼んでいいか?」

少し不安の混ざった声にひかれて顔を上げれば、その声の通りの表情が国見を待っていた。

ああ、そうか。

名村も不安なのだと分かって国見ははにかむ。

でもやっぱり恥ずかしい、昨日までの親友が形を変えるなんて自分の中では有り得なかった出来事なのだ。

言葉に出来ないかわりに国見は名村の体にすり寄り愛しさを込めて抱きしめた。

どうかこれで伝わりますように。

少しして名村が国見の頭を優しく撫でた。

伝わったのだろうか。

顔を上げればやわらかく微笑む名村がいる。

「優子。」

「…はい。」

「同期から彼氏に格上げしてくれる?」

下からの物言いはさっきまでの名村と大違いだ。

やっぱりあれは名村らしくない行動で、それをさせたのは自分だと思うと国見は少し優越感に浸った。

「無理しちゃって。」

「…煩いな。なかなか靡かないお前が悪い。」

そういえば前から好きだったと告白されたのを思い出す。

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