マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
長年ピアノを弾いてきたことで、私の手はゴツゴツしてて、手だけを見れば年齢どころか性別さえも危ういのではないだろうか。

「じゃあ、シモーヌさんが私のピアノ、一緒
に踊ってくれるなら。」(英)

「私のほうも分かった?」(英)

シモーヌさんがクスクス笑う。
本格的にやってたわけじゃないから、カンベンして、と言ってきた。

やっぱバレエやってたんだ。


シモーヌさんは歩く時やたたずまい、背筋が通ってて、ピンとしている。
歩き方も骨盤から前に出る様な、バレリーナを
思わせるそれだったから、私はそうじゃないかなと思っていた。


「勝手に触る、大丈夫?」(英)

「大丈夫。お客さんも弾いたりするから。」
(英)


ピアノの蓋を開けて、一つ音を出してみる。
うん。調律もちゃんとしてある。

「せっかくだから日本の曲弾いてみてよ。」
(英)


日本の曲……?
うーん。
さっき叔父さんと会話してから、ずっと銭形平次のテーマ曲が頭の中をぐるぐる回っているが
そんなの弾いてどうする。



< 145 / 288 >

この作品をシェア

pagetop