マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「何があったか、って言うほどの事でもない
よ。」


空っぽの笑顔を浮かべる。
ほほう。
簡単には言いたくないらしい。


「丸一日食事らしい食事も摂らず、無精髭の
やつれた顔で言われても、説得力ありません
けれど。」

「あ、そんな顔してたんだ。」


頬を擦っている。鏡も見てないんだ。


「……………。」


その様子をじっと見つめる。
穴が開けられるんじゃ無かろうかという位に。


やがて根負けしたのか、梁瀬さんはしぶしぶ口を割った。


初めて振る曲を勉強したつもりだったが、それはあくまでも、つもりにしか過ぎず、想像とはかけ離れていた事。


昨日一日で、勉強不足の指揮者だな、という印象を与え、楽団員の反応も鈍くなった事。


リハーサルの雰囲気も段々と重くなっていった事。
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