マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「別に、討論、じゃなくて、口論?ケンカし
てたわけじゃない。私が怒っただけ。一方的
に。」(英)


顔は自然に憮然としたものになった。
恥ずかしいのを誤魔化しているのもあるけれど

「何が原因で、カナデは怒ってたの?」(英)

「それは、ヤナセさんが…って、あ!」(英)


私は昨日、二人が梁瀬さんに吹き込んだ事を思い出した。


「ちょっと!シモーヌさん!昨日、ヤナセさ
んに言ったでしょ。変な事!」(英)

「変なこと?」(英)

「そう!悩んでる事、何で私に相談してくれ…
」(英)


そこまで言いかけて、止まった。
遠くからリハーサルの音が耳に届いた。
プロコフィエフのピアノ協奏曲だ。


冒頭のクラリネットのソロは流石にここまで届かなかったが、ピアノが入ってくる所は聞こええきた。


ぶ厚い雲の隙間から、光が差し込んで来るかのような美しいメロディーに、ピアノが傍若無人にカットインしてくる、あの箇所。
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