マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
身体も思考も停止する。

「…あ、…っと。そ、そう言えば、メール、会
社に送らなきゃ、ならないんだった。忘れて
た。」(英)

ヘタな笑顔を作る。

「カナデ?」

慌て出す私を、シモーヌさんはきっと変に思っているだろう。
でも、止められない。
焦燥感が募る。居たたまれない。
早く何処かへ行かなければ。

速足で事務局を後にする。

心臓が早鐘を打つ。
早く。早く何処かへ。

…嫌だ。
イヤだイヤだイヤだ
ヤダヤダヤダヤダ!

聞きたくない!



それでも音は私の背中を追いかけてくる。

既に足は小走りになっていた。

梁瀬さんの指揮で、あの人が演奏するプロコフィエフなんて聴けない。

夢を叶えることが出来ない、嫉妬にまみれた負け犬が、逃げていく。
そんな表現がぴったりだった。
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