マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
逃げる様にして事務局を後にし、気付けば開けた川沿いへとたどり着いた。
何て言う川なんだろう。それすらも知らない。


劇場とホテルの往復、食材を買い出しに行った以外は、ゆっくりと街並みを楽しむことも出来てない。


劇場や美術館が建ち並ぶ地区は新市街地と呼ばれる。
ヨーロッパの街並みを想像した時に思い浮かぶ風景が広がるような、歴史ある雰囲気の街並みを楽しむなら、旧市街地の方が良いらしい。


これが仕事じゃなかったら、そこまで足を運べたのに。

芝生に座り込み、ぼーっと考えていた。

こういうのって、どうなんだろ。
ゲストの指揮者やソリストは、公演が終わったら観光を楽しんだりするのかな。
アナスタシアさんもそうするのかな。


公演でピアノを演奏する為に、リヨンを訪れた
アナスタシアさんと、指揮者のマネージャーとして、リヨンを訪れた私と。


川の水面は太陽の光を受け、キラキラと輝いている。


もうすぐ昼の休憩の時間だ。
外に食べに行くのか、それとも何か買っていったほうが良いのかな。


マネージャーの仕事とはいえ、こんなことばかり考えている自分は、やっぱり負け犬でしかないのだ。
どっこらしょと立ち上がり、お尻をパタパタと
払った。


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