マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
モーツアルトは作曲家の中でも、天才的な人で
曲の構造を理解するにも、理屈で推し量る事が出来ない所がある。


ーだから私は、モーツアルトが得意ではないの
だけれど…、ああも易々と弾きこなしてしまわれると……。


私の胸の中に焦燥感に似た、チリチリとしたものが沸き上がってくる。
焦げ付きそうなくらいに。

それはアナスタシアさんのピアノを聴いた時の
比ではない。


正面からは、マエストロの背中しか見る事が出来ないが、ピアノを弾くことを、音楽を心から楽しんでいる事が否が応でも伝わってくる。


どうしよう。泣きそう。


何なの?

私、いつまで、誰に対してでも、こんな思いずっと抱かなきゃならないの?


そして更なる追い討ちがかかる。




『誠に残念ではありますが、今回はご希望には添えない結果となりました。
今後大石様の御活躍を心よりお祈り申し上げます。』



オーデイションを受けた音楽事務所から、お祈りメールが届いた。


< 210 / 288 >

この作品をシェア

pagetop