マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「それで?何て言ったの?」(仏)

「……それが、よく覚えてない。何か言葉を発
したらしいんだけど、覚えてないんだ。
私の演奏どうでしたかって訊かれて、何て言
おう何か言わないとって、考えてる内にポロ
っとこぼしてたらしいんだ。“悪くないね”って
……。」(仏)

シモーヌは口を開けたままこちらを見ている。

「どーするのよ?!ソレ!」(仏)

「……どうしたらいい……?」(仏)

「何でその場で間違いを正さないのよ?!
カナデ期待してるわよ、絶対。」(仏)

「………だよね。」(仏)

「指揮者の権力を行使して、彼女をソリスト
として出演させるなんて事、よくあるの?」
(仏)

「僕、そこまで人として最低なことはしない
つもりだけど……。」(仏)

どちらからともなく、重い溜め息がもれた。

「……あー、もう取りあえず食事にしましょ。
こんな時間だし。パットー!」(仏)

………いたのかよ。

シモーヌと一緒に奥の部屋に向かうと、パトリックは奏ちゃんに東京で購入してもらい、僕が
仏訳した『侵略!イカ娘』のDVDを熱心に見ている所だった。

マニアックさに拍車が掛かりそうで恐い。
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