マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と


「奏ちゃん、君にはピアノの才能はないよ」


今、何て


「僕はピアニストではないけれど、プロの指
揮者として、音楽家として言わせて貰うなら
ば、君が演奏するピアノにはお金を払ってま
で聴きたいという価値があるとは思えないん
だ。」


マエストロの表情は余りにも清々しく、凪いだものだった。
その反面、言葉が直球すぎて、鋭すぎて、体が固まる。
だってこの前、


「……前にピアノを聴かせて貰った時、君の期
待に満ちた表情を曇らせたくなくて、思わず
適当な事を言ってしまったんだ。申し訳ない
。」

マエストロは立ち上がり、深く礼をした。

……あー、……そっかぁ……。
マエストロが気を使ってくれてただけなんだ。
そうなんだ。

そうだったんだ……。



妙に落ち着き払った自分と、込み上げるものを抑えようとしている自分とがいる。

私だって自分の演奏がどの程度なのか分からない訳でもない。そこまで自惚れてない。

諦めたくない、その気持ちがマエストロを困らせていたんだ。
私はただただピアノが好きなだけで、それを諦めたくなかっただけなんだけれど。
一縷の望みをかけて、ひょっとしたらの可能性に掛けてみたかっただけなんだけれど。

へええ。

……ふうん、そうだったんだ。

やっぱりなあ。

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