マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
曲は
モーリス・ラヴェル作曲 組曲『鏡』から
『道化師の朝の歌』
だった。


うそ!

曲が、音が、始まった。
……のだが、物凄いテンポにまず、圧倒される
このテンポで押しきるつもりなのだろうか。
連打音の所なんてどうなるんだ。


組曲『鏡』は『蛾』『悲しい鳥たち』『海原の小舟』『道化師の朝の歌』『鐘の谷』の5曲から成る。
中でもこの『道化師の朝の歌』は組曲の中でも有名で、オーケストラ版に編曲したものもある位だ。


曲の上っ面だけをふんふんと聴いていれば、凄く艶やかで、きらびやかな曲だと思う。しかし「道化師」イコール「ピエロ」と捉えるのは間違っている。

人々を笑わせる道化を演じながら、その仮面の下には悲しみを圧し殺している、的なピエロではなく、今で言うチャラ男っぽい感じの男性を指している様なのだ。
女性と一晩過ごした翌朝の、「あ~あ、またやっちゃったよ」のドタバタニュアンス……
あれ?


……何だろ?……嫌がらせ?
思いっきり、身に覚えがあるんだけど……。

途端に目つきが、胡乱なものになってしまうのが、自分でも分かった。


でも、それでも。

スペインを意識した、輪郭のはっきりとしたリズム。弱い指でのトリルでも、ものともしない強い打鍵。

……やっぱり、凄い。
心臓を鷲掴みにされるし、引きずり込まれる。

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