マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
こういう世界に引き摺りこむのを、ためらいたくなるようなことを奏ちゃんが言う。


可愛いなぁ。
頬が緩んでいるのが、自分で分かる。
君だけはそのままでいてほしい。
真っ白な、綺麗なままで。


「笹かまは?牛タンもあるよ?」


揺さぶりを掛けられ、奏ちゃんは悩ましい表情になっていた。


案の定、若くて可愛いらしい新人マネージャーは行く先々でちやほやされた。
刷り上がったばかりの名刺を緊張した面持ちで配っている。


オーケストラの事務局は仕方ないとしても、団員は危ない。


指揮者のマネージャーが、楽団員に挨拶や日常会話程度ならあっても、仕事上そんなに絡む事はないはず。


「さっきインスペさん(インスペクターの略。
リハーサル等の進行マネージャー)にお聞きし
たら、リハは10時から昼食はさんで14時
までだそうです。で、ゲネプロが…」


奏ちゃんが予定について教えてくれる。
ここの楽団は御年頃の男性が多かったぞ。気をつけないと…。


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