マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
痛っ!

気付けば、指揮をする左手から出血していた。


どうしてこうなった?
絶えず動かさなければならない手から、鮮血は飛ぶ。
せめて近くで演奏している楽団員の楽器には、飛ばない様にしないと。


ある程度の動きを制限した中で、何とか曲を終わらせる事が出来た。


拍手の中、舞台袖へと下がる。
慌てたくない。


後ろの方の観客には、何があったか気付かれてはないはず。音楽を楽しみに来ただけの人達に
余計な動揺を与えたくない。


「梁瀬さんっ!」


オーケストラスタッフが、僕に飛び掛からんばかりにして集まってきた。


「すみません。いつの間にかこんな事になっ
てて。指揮棒が折れたのは気付いてたんです
けれど。」


指揮をしている最中はアドレナリンが出ていて
さほど気にならなかったが、今改めて見るとズキズキ痛み出してきた。
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