マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
見れば指揮棒が折れて、親指付け根に突き刺さったままになっている。


一部始終を舞台袖から見ていたスタッフによると、指揮棒が譜面台に当たって破損。
これはよくある。


ただでさえ鋭敏な先端が、手を交差させた時に
付け根の部分に刺さり、そのまま折れてしまったとの事。


出血こそは鈍くなってきたが、折れた棒が取り出せない。


「ちょっと!…何やってんですか梁瀬さん!」

タオルで押さえてくれる。

「あ、そっか。取っちゃうと出血ひどくなる
のか。」


「これ縫わないと駄目でしょう。
…まさか次の4番も振るつもりですか?!」


「つもりだよ。…え、おかしい?」


たかだかあと40分の話だ。
あり得ない。こんな事位で。


「出来たとしても、楽団員の事も考えてみて
下さい。」
< 33 / 288 >

この作品をシェア

pagetop