マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
一階搬入口に寄せてもらったタクシーに奏ちゃんと乗り込む。


はぁ。
吸い込んだ息は直ぐに吐き出された。

「痛いんですか?」

奏ちゃんが血の滲んだタオルを見て言う。

はい。…色んな意味で。


「音楽だけが僕の取り柄だったのに。
自分の不注意でこんな事になってさ。最後ま
でやろうとしたら、いない方が集中出来るな
んて言われたし…。後半のプログラムの方が、
良かったとか言われでもしたらさ…。」


奏ちゃん相手に何愚痴ってんだろ。


「僕の存在意味なんて何なんだろう、って。
このオケに対しても、随分失礼な考えで向き
合ってたなって、さっき…」

「…メンドクサ…」

奏ちゃんが途中で何かをつぶやいた。

「え?ごめん何?聞こえ無かった。」


「しっかりしてくださいよ!いくら怪我をし
て弱気になってるからって、自分で自分の事
いない方が良いとか止めて下さいよ!」
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