マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「出掛けますよ。いいですか?」

「え?出掛けるって、何処…。」


言い終わらない内に机の上に置いてあった、カードキーとジャケットをわしづかみ、僕の腕を引っ張り廊下へと引きずり出した。


ごめん。僕、それどころじゃないんだ。
明日の最終日のリハ迄に、スコアのチェックし直したい箇所が、幾つも…


そう奏ちゃんに言いたいのだか、そうはさせてくれない気配を目の前の背中から出してくる。

…コワイ。


だいたいこういう感じでテンパってる時って、
そっとしといてくれるもんなんじゃないの?
私には何も出来ないけど、黙って見守ることしかできないけど…、みたいなさ。


イヤ。
奏ちゃんにそういう事を求める僕が、間違っているのか…。


奏ちゃんに引き摺られる様にして、後を着いていく事数分。
僕達は一軒のアパルトマンらしき建物の前にたどり着いた。


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