マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
出してくれた料理は、白ワインの煮込み料理だった。
僕はそれを色んな思いで噛み締めた。


食事も済んで、二人は僕をホテルまで送ってくれた。食べきれなかった分の料理と共に。


「これ、明日の朝食に食べて。カナデと一緒
に。最終日のリハに向けて今日はもうゆっく
り寝て。」(仏)

「そうだよ。一夜漬けの勉強ほど、役に立た
ないもんだしね。」(仏)

またテストの例えかよ、と思わず笑った。

「ありがとう。おやすみ。シモーヌさんは、
また明日。」(仏)

二人に手を振り、ホテルの中へと入った。


自分の部屋の前まで来ると、ガードキーをジャケットのポケットからごそごそと探り出し、ふと隣の部屋に目が行く。


ノックして奏ちゃんに何か一言声を掛けようかとも思ったが、特に何も思い浮かばず、ノックしようとした手を握りしめた。

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