それでも君が必要だ

「えっと、順番にコピーして順番に戻していくから……」

「うんうん」

「智史さんは、上から順番に渡してください……。そうしたら私がコピーして元に戻します」

「オジサンは渡すだけでいいの?」

「……あっ」

もう、うっかり敬語になっただけなのに、またオジサンだなんて……。

でも私、やっぱり敬語で話した方がスラスラと言葉が出てきて喋りやすい。

私、智史さんともっと普通にお話ししたい。

どうしよう……。
ここはひとつ、思いきってみようか?
智史さん、怒るかな?

目を閉じて小さく深呼吸をする。そして思いきって口を開いた。

「……オジサンは渡すだけでいいです」

「!!」

智史さんは固まったまま私を見つめた。

怒った……かな?
いや、そんなことはなさそう。
智史さんはこんなことでは怒らない。
むしろ、楽しんでくれるはず……。

でも確証は持てなくて、チラッと見上げてすぐにうつむいた。

智史さん、目を大きく開いてわざと驚愕の表情を作っている?

「美和さん、やっぱり俺のことオジサンだと思ってたんだ!」

「思ってません。そんなことより、早くしないとこんなに大量のコピー、終わりませんよ?」

緊張していることに気づかれぬよう努めて冷静に答えると、智史さんはニシシッと子どもみたいな笑顔を向けた。

やっぱり怒らなかった。……良かった。

「まさか美和さんにオジサン返しをされるとは思わなかったなー」

「……ごめんなさい」

「いや、全然いいんだ!美和さん、やっぱり敬語の方が喋りやすそうだね?ホントはタメ口で喋りたいけど、たくさん喋ってほしいし。うーん、これは……ジレンマだな」

唸りながら腕組みなんてしていないで、早くコピーを取らないと!

私が焦りつつ困って見上げると、智史さんは頭をかいてあははと笑った。

「ごめんごめん!じゃあ、さっさと終わらせちゃおう!」

智史さんはまた楽しそうにファイルを開くと、一番上から一枚紙を取り出してペラッと渡してきた。
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