それでも君が必要だ
渡された伝票を見ると、裏に請求書が貼ってある。これは両面ともコピーしないといけないよね?
「裏と表、一枚ずつコピーしますか?それとも両面コピーにしますか?」
「んー?どっちでもいいんじゃない?」
それなら両面コピーした方が紙の節約になるかな。
「じゃあ、両面で!」
ピ、ピ、ピッと!
いつも会社で使っている機種とは違う、使い慣れないコピー機のボタンを押す。
渡された伝票をコピー機のガラスの上に置き、バタンッとカバーをしてピッとコピーをしたら、裏返してまたバタンとカバーを押し付けてピッとして……の繰り返し。
でも、なんだろう。
コピーをとるだけのことなのに、私、なんだかとてもイキイキしている。
もちろんコピーが楽しいわけがないけれど。
智史さんと一緒に作業をしているから?
「美和さん、せっかくデートだったのに、こんなことお願いしちゃってごめんね」
伝票を渡しながら申し訳なさそうに言う智史さん。
いえいえ、全然そんなことはありません。
「いえ。むしろ楽しくなってきました」
私が笑顔でそう答えると、智史さんは不思議そうな顔をした。
「コピーが?」
「はい。単純作業だから……でしょうか?」
「うーん、そうかもね。会社でもよくコピーとるの?」
「まあ、それなりに」
「会社でコピーしてて、楽しいの?」
「会社のコピーは……楽しくありません」
「あはは、そうだよねー」
たわいない話だけれど。
さっきよりずっと自然にスラスラと会話ができている。
智史さんと楽しく話をしながらコピーをして……。
私、智史さんのお役に立てているのかな?
もしそうなら、とても嬉しいの。
このコピーを見て、新しい会計士さんがこれからもこのまま智史さんが経営を続けられるようなプランを出してくれたら、智史さんの会社は父の会社の支援が必要なくなるかもしれない。
そうしたら、これからも智史さんは大好きな研究を続けられる。
そうなったらいいのに。
……?
あ。
でも……。
それって。
気がついてしまった。
もし父の支援が必要なくなったら。
私の存在も、必要なくなるんだ……。