それでも君が必要だ
最初、キャラメルは角が硬くて口の中にゴロゴロ当たって違和感があったけれど、少しずつとけて、柔らかく舌の上に馴染んだ。
とけて口の中に広がっていく。
「あ……」
これって?
……甘い?
見上げると、智史さんは「ん?」と不思議そうに首を傾げた。
まだうまく感覚がつかめなくて、もう一度うつむいて舌の上の感覚に集中する。
あ……甘い!
キャラメルって、すごく甘い……。
強烈な甘さを感じる。
こんなに甘いなんて。
知っていたはずなのに、知らなかった。
味を感じるって、こういうこと?
「……甘いなあ」
少し大きめの声を出したら、声が震えて、なぜか鼻の奥が痛くなって、わけもわからず涙がぽろっとこぼれ落ちた。
キャラメル、あまい……。
クリアに味を感じる。
はっきりと世界を感じる。
狭くて薄暗い部屋の壁が崩れ落ちて、風が巻き起こるようにサアッと世界が広がる感覚。
世界が広すぎて寒々しくすら感じる。
やだ。
どうしよう。
涙が止まらない。
口から吸う息が震える。
私の異変に気がついて、智史さんはガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がると、焦ったように私の肩を掴んで顔を覗き込んだ。
「どうしたの?嫌だった?無理して食べたの?」
ふるふると首を振る。
「あまくて……おいしい」
「え?」
「甘くて、おいしいの」
「……それで、泣いてるの?」
「うん」
智史さん、わけがわからないですよね?
甘くておいしいのに泣くなんて、自分でもわけがわからない。