それでも君が必要だ

頭を撫でる智史さんの大きな手が心地よくて、ため息をついて身を任せ、また目を閉じた。

男の人は乱暴だと思っていたけれど、智史さんは違う。

抱き締められることがこんなに心地いいなんて……。

智史さんの体に包まれて身を任せていると、不思議と心が静まっていく。

大きく深呼吸をして目を開けたら、いつの間にか涙は止まっていた。

「落ち着いた?」

「ん……」

気持ちはだいぶ落ち着いたけれど、まだうまく声が出ない。

「大丈夫?」

「……はい」

「美和さん、甘いもの食べて泣いちゃうなんて、普段甘いもの食べさせてもらえないの?でも、さっきのデザートは普通に食べてたよね?」

「……ごめんなさい」

少し体を離して見下ろす智史さん。

「なんだろう?美和さんが謝る理由がサッパリわからない」

そうですよね?
ちゃんと説明しないとわけがわからないですよね?

「えっと」

言おうとして見上げたら、顔が近くて驚いてうつむいた。
ドキドキしながら小さな声を出す。

「あの……さっきは、味がわからなかったのに、おいしかったって言ってしまったから……」

「……んっ?」

ああ、上手に伝えられない……。
ますますわからないですよね?

「さっきレストランで食べた時は、味がわからなかったの?」

それはそうなんだけれど。

さっきのお店だけじゃなくて、私には今までずっと食べ物に味があるっていう感覚そのものが欠けていたんだと思う。

「……今までずっと、考えたこと、なかったんです」

「何を?」

「食べ物に味があるなんて、私、考えたこともなかった……」

見上げると、智史さんはパチパチとまばたきをした。

「はっ?なんだろう、それ」

唖然としている?
呆れてしまいますよね?

私、どうかしていますよね?
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