それでも君が必要だ
智史さん、そんなに見つめてどうしたの?
何か言いたいことがあるの?
どうして黙っているの?
どうして……、こんなことするの?
こんな風に抱き締められたら、離れたくなくなる。
優しくされたら心が惹かれて止められなくなる。
ずっとそばにいたいと思ってしまう。
一生懸命ダメだって言い聞かせているのに。
智史さん、酷いよ……。
私に全然その気もないもないくせに、こんなことしないで!
悲しくて苦しくて涙がわいて首を振ったら、智史さんは驚いたようにパッと手を離した。
「ごめん!……苦しかった、よね?」
「い、いえ……」
本当は苦しかった。
息苦しかっただけじゃない。
あんなに力強く抱き締められたら、心が惹きつけられてどうしたらいいのかわからなくなる。
でも、ダメ!
ダメなの!
本気にしたらいけない!
はあっとため息をつく。
それだけでも少し気持ちに区切りがついた。
予想はしていたけれど、巻き付いていた腕が離れるとヒヤッと肌寒さを感じる。
寂しい。
けれど思っていたほど寂しくないかも。
守られるぬくもりとは違う、清々しさにも似た心地よさ。
薄ら寒い心地よい孤独。
この感覚、何だろう。
私、今まで考えないように生きてきた。
でも、智史さんに「考えて」なんて言われて、心の片隅でどんどん考えてしまっていた。
考えてしまったら「自分」に気が付いてしまうってわかっていたのに。
考えてしまったら、自分がどういう状況に置かれているのか、気が付いてしまうってわかっていた。
私の今の状況が、良いわけがない。
そんな現実に目を閉じて考えないようにしていたのは、変化を恐れていたからかもしれない。孤独に耐えられないと思っていたからかもしれない。
放り出される世界が広すぎて行く当てもないから、自由が怖かったのかもしれない。
でも、意外と平気。
今以上の孤独はないもの。
孤独を感じても、行く当てがなくても、思いのほか大丈夫。
自由は甘ったれた私を冷たく突き放して、私の意思を求めている。
それでも私は自由になりたい。
「……美和さん?」
智史さんの声に顔を上げたら、黒い瞳が見つめていた。