それでも君が必要だ
伝票の束をトントンッと机の上で揃え、元のファイルに綴って智史さんに手渡す。
「これで終わりです」
最後のファイルを受け取ると、智史さんは書庫の中に戻してハハハと頭をかきながらこちらを見た。
「やっと終わった!これ一人でやってたら大変だったよ。手伝ってくれてホント助かった!ありがとね」
智史さんが手を伸ばしてきて、また頭をポムッと撫でたから、くすぐったくて肩をすくめた。
お役に立てて嬉しい……。
頬が赤くなった気がして目を閉じる。
「そんな、とんでもありません……」
私は智史さんのお役に立てればそれでいいのです。
智史さんの会社の経営がうまくいきますように。
父の会社に頼らないで、智史さんがこのまま研究を続けられますように。
父の会社の支援がなくても智史さんの会社がうまく経営できるってわかったら、私は必要なくなるけれど。
それが一番いいことなんだ。
……本当は、すごく、辛い、けれど。
そのことは、今は、考えない。
「ねえ、美和さん。まだ時間ある?うちで夕飯食べていかない?」
「え?」
思いもしなかった申し出に、驚いてまばたきをする。
「俺、作ってあげるよ?今日は肉じゃがにしようと思ってたんだ」
そんな、作ってもらうなんて……いいのかな?
でも、智史さんの作ったお料理、食べてみたい。
どんな味がするの?
「それとも早く帰らないとお父さんに怒られる?」
「……いえ、大丈夫です」
むしろあんまり早く帰ったら、それはそれで怒られそう。
それに智史さんの手料理を思い出にしたい、なんて誘惑に負けてしまった。