それでも君が必要だ
「謝るようなことじゃないよ。俺が手取り足取り教えてあげる」
教えてもらうなんて。
私、こんな役立たずで足手まといなのに……。
「にんじんはね、いきなり切らないで皮をむくんだよ?美和さんの場合は包丁じゃなくて、ピーラーの方がいいかな?」
智史さんは引出しからY字型の先にカタカタと不安定に動く刃が付いた道具を出してきた。
「これは皮をむくピーラーね。じゃあ、柄の部分を持って」
そう言いながら智史さんは私の後ろに立つとピーラーの柄を私に持たせ、その上から柄ごと私の手を握った。そして包み込むようにもう片方の手でにんじんを持った私の手を握った。
……なんか私、操り人形になってしまったみたい。
それに、包み込まれた背中が密着して智史さんの体を感じて、頬が熱くなってドキドキする。
そんな私のドキドキなんて気にする様子もなく、智史さんは私の手ごとピーラーを動かしてにんじんに刃を当てるとスーッと滑らせた。
滑らせた所からにんじんの皮が薄くスルスルとむけていく。
「ほらっ、こうやって皮をむくんだよ?やってみて」
「はい」
スッと智史さんは私から離れて、にんじんとピーラーを持った私が一人残った。
……どうしよう。
智史さんがやっていたように、私もにんじんの上にピーラーを滑らせてみる。
スルスルスル。
あ、面白い!
綺麗に薄く皮がむける!
「うんうん、上手だよ」
見上げたら智史さんはにっこりと笑って褒めてくれた。
褒められた!
嬉しい。
「少しずつ回して全体をむいてね。指を切らないように気をつけて」
「はい」
そっと一筋むいたら、クイッと少し角度を変えてまた皮をむいていく。
面白い!
何度やっても、綺麗にむける!
どうして?
どうしてこんなに綺麗に薄く皮がむけるんだろう。