それでも君が必要だ
全体の皮がむけたところでにんじんをまな板に置き、ピーラーをじっと注視して指先を刃に当ててみた。
「イタッ!」
あっ、切れた……。
そっか。
切れ味のいい刃だから皮が綺麗にむけるんだ。
刃に触れたら、それはもちろん指先だって切れるよね。
じわっと薄く血がにじみ出た指先をじっと見つめる。
そんな私を智史さんがハッと見た。
「ああっ!なにやってんの!どーして刃に触るの!ちょっと見せて!」
智史さんはぐいっと強引に私の手を引き上げ、真剣なまなざしで指先をじっと見つめた。
「そんなに……深くは切れてないかな?もうっ!美和さん?刃に触っちゃダメだよ!」
あ……智史さん、怒ってる?
智史さんの怒った表情に、じわっと涙がわいた。
落ち込んでシュンとする。
「ごめんなさい」
「もう絶対に刃には触らないで!」
「はい……」
「でもさ」
ん?
また智史さんがニヤリとした。
あれ?
もう、怒っていないのかな?
「一度やってみたかったんだよね」
「?」
首を傾げて見ていると、智史さんは引き上げた手をもっとぐいっと引き上げ、真剣な表情で指先をチロッと舐めた。
柔らかくて生温かい舌の感触にビクッとして、目を丸くして手を引いたけれど離してもらえない。
「痛い?」
ふるふると首を振る。
痛くはないけれど、その感じ、なんかちょっとダメ……。
そんな私の反応を見て智史さんは悪そうにニヤリと笑うと、私を見つめたまま指先を唇で柔らかく挟んでまたペロリと舐めた。
唇の柔らかさと舌の感触。
指先を舐められたはずなのに、なぜか背筋がゾクッとして肩が跳ねる。
なんかそれ、……ダメです。
目を閉じ小さく震えて首を振る。
「ダメなの?いけないなあ、そんな顔して」
そんな顔って、どんな顔?