それでも君が必要だ
困惑に震える私を見て、フッと笑う智史さん。
「可愛いなあ。たまんない」
この変な感覚に耐えている顔がいいなんて。そんなの、やっぱり智史さんって……。
「……ドS?」
唇から指を離してクリッと首を傾げる。
「は?何それ?」
「さっき、お母さんがそうおっしゃっていたから……」
「エーッ?なにそれ!」
智史さんが急に大きな声を出したからビクッとする。
「母ちゃんのヤツ、こそこそ何を喋ってたのかと思ったら……そんなこと言ってたの!?」
「あ!いえっ、えっと……」
本当は私のことを信用できないって話だったんだけれど。
「ドSだなんて誤解だよ!今まで見ててもそんなことなかったでしょ?俺は紳士ですよ」
急にすました顔をして蛇口をひねると、智史さんは指先をそっと洗ってくれた。
手にあたる冷たい水が頬の火照りも冷ましてくれて、気持ちもだんだん落ち着いてきた。
はあ……。
なんだったんだろう、さっきの変な感覚。
「絆創膏貼っておこうね」
「そんなたいした傷では……」
「いいからいいから」
結局絆創膏を指先にくるっと巻いてもらい、その後私は刃の付いた物は持たせてもらえなかった。
智史さんが手際よく野菜やお肉を切り分けていく様子を横でただじっと見つめる。
「美和さん、炒めものならできるかな?こうやるんだよ?」
智史さんは鍋の中に皮をむいて小さく切った玉ねぎやにんじん、じゃが芋を入れて、ヘラで炒めてみせてくれた。
「できる?」
うん。
自信はないけれど、とりあえずうなずいてヘラを受け取る。
そして、見た通りに炒めようと鍋に体を向けた。
次の瞬間。
「アッ!」
熱いっ!
鍋の縁を思いっきり掴んでしまった。
あまりの熱さにパッと手を引く。
「わああ!ちょっと!大丈夫?」
またグイッと手を引かれ、今度は左手を流水で冷やされた。
水、冷たい……。
「美和さん!お鍋は取っ手の部分を持たないと熱いんだよ?わかった?」
「……はい」
それはそうですよね。私って本当にドジで全然ダメ……。