それでも君が必要だ

「大丈夫?痛くない?」

「……はい、大丈夫、です」

はあっ……。

お手伝いどころか迷惑ばかりかけている。心底落ち込む。

「赤くなっちゃった?火傷してないといいけど」

「大丈夫です。本当にごめんなさい……」

「謝らなくてもいいんだ。それにさ」

智史さんがいったん言葉を切ったから、不安になって見上げた。

「美和さんには悪いけど……ククッ……、なんかいちいち面白すぎるよっ!」

智史さんは我慢しきれない、という表情でプッと吹き出し、それから片手でお腹を押さえて「クフフッ!あははははっ!」と大きな声で笑い出した。

そんなに思いっきり笑わなくても……。

「……あー、ごめんごめん!笑ったりして。こんなに可愛い人に出会えて、俺ってホント幸せだよ」

「……」

どうしてまたそんな嘘……。
こんな料理もできないドジな女、邪魔なだけなのに。
婚約者として失格、ですよね?

「手はもう平気そうだね」

流水で冷えて赤みが取れた手のひらをタオルで拭くと、智史さんは私の肩を掴んで言った。

「じゃあ、美和さんは応援係ね!」

結局、見ているだけになってしまった。

何のお手伝いもできなくて、本当にごめんなさい。

申し訳なくて、料理をする智史さんの端正な横顔をじっと見つめる。

はあ……。
料理をする横顔も素敵ですね。
思わず見蕩れてしまう。

私とは不釣り合いな、私の素敵な婚約者。

見蕩れる私に気が付いたのか、鍋の中を見たまま智史さんはフッと笑った。

「美和さん?美和さんの応援はじっと見つめること、なのかな?」

えっと?そうかも。

うん、とうなずく。

「んふふ、いいね!可愛いなあ」

「……」

またそういう嘘をつく。
そんな嘘をついてもらっても、悲しくなるだけだからやめてほしいのに。

やっぱり、智史さんはドSだと思う。
< 119 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop