それでも君が必要だ
「じゃあさ、今度は絹さやの筋取るの手伝って?これならできるでしょ?」
無邪気に話しかけてきた智史さんにハッとして、こわばっていた心が柔らかくなるのを感じた。
「……たぶん」
できるかな?
智史さんの手元をじっと見ながら真似をする。
プチッとヘタを取って、そのままスーッと……。
「?」
スーッといかない。
なんで途中で切れちゃうの?
「あはは!美和さん、そんな真剣になって取らなくても大丈夫だよ。端が落とせればそれでいいからね」
「……」
でも、智史さんは綺麗に取っているじゃないですか!どうして?わからない!わからないよう!
私、絹さやの筋取りすらできないのに、これから一人でやっていけるの?
だんだん不安になってきた。
「さてと。茹でるついでに味噌汁も作っちゃおう……。ん?手伝わなくていいよ。絶対に火傷するから」
一瞬「手伝いましょうか」という私の思いが顔に出たのを読み取った智史さんに、お手伝いを申し出る前からお断りされてしまった。
また落ち込む。
智史さんは慣れた手つきでお湯の煮立ったお鍋に絹さやを入れると、ささっと茹でてすぐざるにあげた。
「そんなに短い時間でいいんですか?」
「うん、茹で過ぎちゃダメなんだよ」
そんなことを話していたら、お鍋のフタの隙間から肉じゃがの匂いが漂ってきた。
「おおー、いい匂いだなあ」
突然ガラリと扉を開けて、社長さんが入ってきた。
「あっ、親父。皿出して」
「ほーい。美和さんも一緒に食べてくんだよね?」
「はい」
「うんうん、良かった」
社長さんは古い飴色の食器棚を開けてカチャカチャと皿を取り出すと、智史さんのそばに置いた。