それでも君が必要だ
ここにいたい。
本当はずっとここにいたいよ。
お父さんが無邪気に「はいっ、どうぞ!」と渡してくれたみたらし団子も、砂糖醤油の甘さが口に中に広がっておいしくて……。
テレビを見ながら、笑ってお喋りして、おいしく食事をする。
こんなに暖かくて幸せな時間、幸せな場所、私は知らなかった。
……知ってはいけなかった。
だってもう知らなかった自分には戻れないもの。
でも、戻らなきゃ。
ここにいられるわけじゃないんだもの。
私はあの家に帰らないといけない。
「それじゃあ、僕はそろそろ行くとしますよ」
お父さんはそう言って立ち上がると「美和さん、またね」とにっこり笑って手を振り部屋を出て行った。
「……お父さんはどちらに?」
「研究部屋だよ」
そういえば智史さん、お父さんのことをマッドエンジニアなんて言っていた。食べたらすぐに戻っちゃうなんて、本当に仕事熱心。
「ねえ、美和さん」
「はい」
「また会ってくれる?」
「え?」
突然の問いかけに目を見張って首を傾げる。
また会ってくれる?なんて。
智史さんは私と会わないといけないんじゃないの?
「胃袋をつかむと心もつかめるって言うでしょ?俺は君の胃袋と心をつかめたかな?」
「そんな……。それは男の人が相手なら、の話ですよね?。本当は私がお料理しなきゃいけないのに、何もできなくてすみませんでした」
「そんなの全然いいんだよ。好きでやってることだし。美和さん、何やらせても面白かったし」
また思い出したようにプッと笑う。
でもすぐに正座をただして真剣な顔をすると私をじっと見つめた。
「美和さん、また俺と会ってほしい」
「は……はい」
真剣な黒い瞳にドキドキして直視できず、思わずうつむいて視線をそらした。