それでも君が必要だ

目が覚めると、空気の澄んだ寒い朝だった。

リビングに行くと父は新聞を読んでいた。
コーヒーを淹れ、トーストと昨日買っておいたサラダを用意して声をかける。

「……いってきます」

父は新聞から視線を外すことなく大きな声を出した。

「たまには役に立て」

「はい」

返事だけは即答して急いで玄関に向かう。

たまには役に立て、なんて言われても……。

何をすれば私は父の役に立てるの?
副社長さんを手玉に取ればいい?

そんなこと、私なんかにできるわけがないのに。

玄関の扉を開けると冷たい風が吹き込んできた。足元が寒くて心もとない。

見上げると綺麗な秋晴れの空。
雲が高く遠くに見える。

立ち止まって大きく息を吸い込むと、空気の澄んだ冷たさに少しだけ自由を感じた。

急いで駅に行かなければ。
今日は出かける時だけ父のいいつけ通りにあの短いスカートを穿いたけれど、駅に着いたらトイレで着替えることにしていた。

急いで駅に向かい、予定通り膝丈のスカートに穿き替えたらため息が出た。なんとなく気持ちの悪かった足元が落ち着いてようやくほっとする。

やっぱりこの方がいい。

さて。
これから電車に乗って上野駅に向かわなければならない。

今日の待ち合わせは上野駅。

『公園口という出口があります。公園改札の外です。そこで待ち合わせをしましょう』

そう言われたけれど。

上野駅なんて有名な駅だよね、くらいにしか考えず、なんとなく電車に揺られて来てしまったら大きな駅!

人、いっぱい。
どっちに行ったらいいの?

キョロキョロと上を見上げてようやく『公園改札』の文字を見つけると、それを頼りに何とか公園口を見つけた。

それにしてもこんなに混んでいるなんて!
土曜日だから?
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