それでも君が必要だ
家族連れ、女の子同士の集まり、カップル、外国の人。いろんな人がぎっしりガヤガヤと集まっている。
こんなに人がたくさんいたら副社長さん、私のことを見つけられないのでは?
あまりの混雑に不安になって周りを見回す。
「美和さん」
「え?」
副社長さんの声!
声は聞こえるけれど、姿が見えない。
胸の前で手を握り締め、またオドオドと首を左右に振る。
「後ろですよ、うしろっ!」
ハッと振り返ると、白いシャツに黒いジャケットの好青年が微笑んでいた。
……誰?
副社長さん?
雰囲気が違う。
でもその黒い瞳。黒縁眼鏡にくせ毛。
ということは副社長さんですね?
「今、眼鏡で判別したでしょう?」
「エッ!……い、いえ。そんなことは……」
眼鏡も確かに判断材料だったけれど……。
だって、この間とずいぶん雰囲気が違うんだもの。その爽やかな格好も、その爽やかな微笑みも。
「あはは、いいんですよ。それにしても、まさかここがこんなに混んでいるなんて思いませんでした。場所はすぐにわかりましたか?」
「はい」
「それはよかった。じゃあ、行きましょうか」
「はい……」
どこに行くのかな?
副社長さん、前に会った時は無表情だったから、無口で冷たいイメージだったけれど、意外とお喋り。
この人も軽いの?そういうことでもないの?
……よくわからない。
誘導されるように信号を渡ると、目の前に大きな建物。公園、かな?
「美和さんがどこに行きたいのかわからなかったので、悩んだんですけどね。ここならいろんなものが揃ってますよ?動物園も美術館も博物館も。まあ、公園散歩ってのも悪くないですね。どこに行きたいですか?」
「……」