それでも君が必要だ
今どき父の言いなりになっているこんな変わり者な私のことなんて、明るい副社長さんが気に入るわけがない。だから私を可愛いと言うのは嘘。
でも、嘘でも副社長さんが可愛いと言ってくれていれば、表向きには父の言いつけ通り副社長さんを手玉にとったことになる?
それに、このまま黙っていれば副社長さんは私に優しくし続けてくれるに違いない。
……。
やっぱりこのまま黙っていよう。
会社のために一生懸命な副社長さんを利用していることには罪悪感を持つけれど……。
でも私……、優しくされたい。
もうしばらく副社長さんの嘘に甘えたい。
「君のことは謎、というかお互い何にも知らないからさ、今日はいろいろと話がしたいと思って来たんだ。君だって俺のこと、知らないでしょ?それともお父さんからいろいろと聞いてるのかな?」
「……いえ、何も」
「俺のことなんて、知りたくもない?」
「そっ、そんなこと、ありません」
首を振って急いで見上げると、副社長さんは微笑んだ。
「そう?じゃあ、とりあえず俺から自己紹介しようか」
副社長さんはこの状況を楽しんでいるかのように姿勢を正すと、コホンッと咳払いをした。
「えー、志嶋智史、歳は三十歳です」
三十歳?……若く見える。そんなに上だと思わなかった。
「知らなかった?」
私がうなずくと副社長さんは苦笑いをした。
「本当に何も聞いていないんだね?」
「すみません」
そうですよね?
普通は婚約者のことはいろいろと知っているのが当たり前ですよね?
「いや、いいんだ。じゃあ続きね。えー、今は会社役員をやってます……って言うと聞こえはいいけど、本当はただのエンジニアです」
「エンジニア?」
「うん。ロボットの開発をしてるんだ」
「ロボット、ですか……?」
ロボットと言われると、ブリキのおもちゃのような四角い顔と四角い体のロボットをイメージしてしまうけれど……、違いますよね?
「ロケットじゃないよ?」
「……?はあ、ロボットですよね?」
「あっ、冗談が通じないっ!」
えっ!?冗談?
冗談だったの?
……どこが?
「……すみません」
「あはは、いやいや、通じなさそうな気はしてたんだ。ごめん!で、俺がやってるのは産業用ロボット。垂直多関節ロボットの力覚センサと視覚センサを利用した協調制御システムの開発をしてるんだ」
「?」
……ん?
えっ?
ちゃんと聞いていたつもりだったのに、難しい言葉が多過ぎて大部分を聞き逃してしまった。