それでも君が必要だ
でも、……違う。
信じちゃダメ。
私のためにそんなことをする人、いるわけがない。
副社長さんは父からの支援を確固たるものにしようとしているだけなんだから。本気にしてはいけない。
浅く息をする私を見て副社長さんは困ったように微笑んだ。
「そんなこと言われたら迷惑かな?」
「い……、いえ」
「あの時、会社のために頭を下げてたのなんて柴田専務だけなんじゃない?俺は君がほしいからだし、親父はなんとなくだろうからね」
そんな不真面目な感じでしたか?私にはシリアスな場面にしか見えなかったけれど。
でも、言われてみれば確かに社長さんは場違いな感じで一人キョロキョロしていた。のんびり優しい社長さんのことを思い出すと心が和む。
あの社長さんは今回のことをどう思っているんだろう。息子の結婚話を単純に喜んでいるようにも見えたけれど。
副社長さんはうーんと唸って腕を組んだ。
「ただ、今回の話はね、どうも腑に落ちないんだ」
「腑に、落ちない、ですか?」
「うん。俺も会社の経営に関わるようになったのなんてここ二年くらいだから決算のことなんてよくわかんないんだけど、上期の決算が赤字に転落したから事業譲渡に応じましょう、なんて突然言われて納得がいかないんだよね。だから、赤字の理由を明確にして今後の方針を出すまでは認められないって突っぱねてたら、急に君との婚約が持ち上がったりして。やっぱり、何かがおかしいと思うんだ」
なるほど……。そういう流れだったんだ。
そうやってあなたは私と婚約する羽目になったのですね?
父は何を考えているんだろう。
今期赤字に転落したシジマ工業に、スイ技研は事業譲渡を提案した。
副社長さんはその事業譲渡に応じなかった。
でも父は事業譲渡をさせたい。
だから私を婚約させた……?
??
……全然話がつながらない。
事業譲渡と私、何にも関係ないのに。