それでも君が必要だ
智史さんの手のひらは大きくて暖かくて、私の手なんかすっぽり入ってしまう。
力強く包み込まれる感触に不思議と心は穏やかになっていくのに時々指先が痺れる。トクトクと打ち続ける心臓は痛いまま。
私が何度も息を吸ったり吐いたりしたから、智史さんは心配そうに覗き込んだ。
「緊張してるの?」
「は、……はい」
それはもう、とても緊張しています。
だって、こんな風に手を繋いで歩くなんて。
「……手を繋ぐの、初めてみたい」
つぶやくように智史さんが言ったからうなずいた。
「はい、初めてです」
「えっ?……そう、なんだ。それは……男心をくすぐるね」
「そうなんですか?」
「そりゃあそうだよ」
「はあ」
そうなんですか?
男心はよくわかりません。自分のこともよくわからなのに。
全くドキドキが治まらないままうつむいて足元を見たまま歩く。
でも、智史さんは歩き始めてすぐに首を傾げて立ち止まった。
「なんて言うのかなあ……」
「?」
「なんかさ、一緒に歩いてると気持ち悪いんだよね」
「!!」
突然の強い衝撃に息をのんで目を見開いた。
気持ち悪いなんて……。
同じことを前にも言われた。
前の婚約者二人にも全く同じことを言われた。
『お前、キモいんだよ』
二人の声が耳に何度も響く。
ごめんなさい!
私、気持ち悪いんですよね?
それなのに手なんか繋いだりしたから……。
ショックでギュッと目を閉じた。
「ごめんなさいっ!」
勢いよく手を引いて振り離そうとしたら、智史さんは強く握り返して大きな声を出した。
「違うっ!ごめんっ!違うんだ!俺の語彙が乏しいせいで変な言い方になっただけ!気持ち悪いなんて言ってごめん!」
手を引いて逃れようとする私の手を両手で強く握りながら智史さんは切ない瞳をした。
どうしてそんな瞳をするの?
その瞳はどういう意味なの?
「でも私……、気持ち悪いってよく言われるから」
「誰よ、そんなこと言うの!いやいや、違うんだ、そうじゃないんだよ。ただ、なんかこう、違和感というか、なんだろうな……」