それでも君が必要だ

智史さんが考え込んだから、その隙に手のひらから抜け出せるんじゃないかと思い手を引いたけれど、思いのほか強い力で握られていて抜け出せない。

「悪いけど、離さないよ」

鋭い目つきでそんなこと言われても……。

だって私のこと、気持ち悪いんでしょう?
それなら離してくれたっていいのに。

「行こうか?」

「……」

黙って考えていた智史さんは、何事もなかったかのように私の手を引いて歩き始めた。

でも智史さん、私のことが気持ち悪いんですよね?
このまま一緒に歩いていてもいいんですか?

変な緊張でドキドキして、私もすごく気持ちが悪い。

気が紛れるよう、じっとうつむいて智史さんの足元を見ながら歩いた。

「あー、そっか。わかった」

「え?」

「違和感の原因、わかったよ」

そう言って立ち止まったから見上げると、智史さんはにっこり笑った。

私の気持ち悪さの原因ですか?
そんなつまらないことがわかったからって、爽やかに微笑まなくても……。

「美和さん、どうして君は歩く時に歩幅とかタイミングを俺に合わせようとするの?」

「?」

何の話?

「一緒に歩いてる時にさ、君は俺の足先を観察して歩幅と足を出すタイミングを完全に合わせてくるんだよね」

うーん……。
言われてみたら確かにそうだったかもしれない。でも、どうして?と聞かれても理由はよくわからない。

「そう、だったでしょうか……?」

「無意識でやってるのかな?でも、たぶんそれが違和感の原因だと思う」

そうなのかな?
そんなことを言われても……。

そもそも、歩幅を合わせて歩いてはいけないものなの?
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