それでも君が必要だ
「おっ!ねえ見て見て!お祭りでもないのに屋台が並んでる!」
はしゃいだ声につられて参道を見ると、縁日で見るようなタコ焼きやチョコバナナの屋台が閉まった状態で並んでいた。
「この時間は開いてないんだね。まあ、開いてると買いたくなっちゃうから、ちょうどよかったかな。この後は食事に行くから我慢しないとね。そもそも今日は俺、食事に行こうって君を誘ったわけだし」
「……はい」
食事……。
そうですよね?今日は食事に誘われたのです。
はあ、緊張する。
手を繋ぐよりもずっとずっと緊張する。
参道を進むと、柄杓が並びチョロチョロと水が流れ落ちる手水舎の前で智史さんが立ち止まった。
繋いでいた手を離して柄杓に水を取り手を洗ったから、私も習って柄杓に水を汲む。
要領がわからず、思いきってザバッと手に水をかけたら予想以上に冷たくて、思わずふるっと身震いした。
わわっ!冷たっ!
もう冬だもの。それは冷たいよね。
冷たく濡れた手を震えなからじっと見つめていたら、ふわりとハンカチで手を覆われた。
……暖かくて、柔らかい。
「冷えちゃうからすぐに拭かないと!ここの水、思いのほか冷たいね」
智史さんに優しくハンカチで手を包まれたら、暖かさが心に沁みて目を閉じた。
この人は優しい。
こんな私にさえ優しくしてくれて。
もともと性根の優しい人なんだろう。
私にはもったいない人。
この人ともっともっと一緒にいられたらいいのに……。
ぼーっとしている間に手を拭かれ、また大きな手に包まれた。
そして手を繋いで弁天堂に向かう。
弁天堂は赤い柱に白い壁、緑の屋根とカラフルで、私には子どもの頃に読んだ童話に出てくる竜宮城のように見えた。
確か弁財天様って七福神の女神様ですよね?
女性の神様だからそんなイメージを持ったのかな。