それでも君が必要だ
前の婚約者はお店の予約なんて、そんなことはしてくれなかったもの。
「お店、この近くなんだけどさ、食べ終わったら動物園でも行く?」
「動物園、ですか?」
「うん、動物園。パンダいるよ?」
「……パンダ」
特段興味はないけれど、行った方がいいのかな?
「なんか全然興味なさそうだね?」
「……智史さんは行きたいですか?」
「いや、俺はいいよ。君が興味あるなら行きたいけど」
「……」
智史さんはフッと笑った。
「君はいろんな物事に興味がないんだね?」
「そう、でしょうか?」
そんなのつまらない人間ですよね?
だから、毎回婚約者に面白くないって言われてしまうんだ。
「きっと考えないから興味もないんだろうね」
「はあ」
なんか、元も子もない言われよう……。
そう言われてしまうと、私って何も考えていないバカな子、みたいです。
密かに落ち込んでいたら、智史さんは繋いだ手をギュッと握った。
「でも、俺には興味を持ってくれないかな?勝手に決められた婚約者なんて嫌かもしれないけど、俺のことは知ってほしいし、考えてほしいんだ」
見上げるとそこにあったのは、予想していた優しい瞳ではなく真剣な瞳で、思わず息をのむ。
そんな真剣な瞳、本当みたいで困惑する。
「君に興味を持ってもらえるように俺も努力するから」
「……」
ドキドキしてうつむいて、勘違いしそうになる自分への戒めに唇を噛んだ。
私が智史さんに興味を持たなくても、父の会社は智史さんの会社を支援するから大丈夫。
だから、立て続けに勘違いするようなこと、言わないでほしい。
さっきから、智史さんの発言にいちいち翻弄されて舞い上がって、その度に落ち込んで悲しくなる。
「とりあえず、ご飯食べに行こう」
うつむいた私を元気付けるような明るい声に手を引かれ、また二人で歩き始めた。