それでも君が必要だ
「……そんな、困ります」
「あ、敬語!そうだよねー?若くてピチピチな君から見たら、俺なんてオジサンだもんね?」
「ピチピチなんて……」
「あー、その言い方もオジサンぽい?やっぱり、7歳も離れてるっていう俺と君との距離は縮まらないのかな?」
「……」
智史さん、大袈裟な言い方でなんだかとても楽しそう?
「……わざと、ですか?」
「だって、こうでもしないと敬語やめてくれないでしょ?思いきって普通に喋ってみてよ。案外形から入るのも悪くないと思うよ?」
「でも……敬語だからって智史さんのことオジサンだなんて考えたこともありませんから」
智史さんはため息をついて首を振った。
「君が敬語を使う限り、俺はずっと自分をオジサンだって自虐し続けることになるんだけど」
「……」
そんな会話をしていたら、湯気の上がるスープとパンが並べられ、その後すぐに色鮮やかなソースのかかったお魚も運ばれてきた。
智史さんがにっこり微笑む。
「おいしそうだね」
「はい」
「とりあえず休戦!食べよっか?いただきまーす」
「いただきます」
食べようにも色鮮やかで綺麗だから、崩してしまうのがもったいない、なんて思ってしまう。
でも綺麗なお料理に見蕩れている時間は私にはない。
「今日は、本当は動物園とか美術館に行くのがいいのかなって思ってたんだけど、やめようか?」
「……はい」
「だからと言って、君は渋谷とか恵比寿がいいってタイプでもなさそうだね」
「はあ」
「どうしようかな……」
そんな話をしつつ、いつも通りチラチラと様子を観察しながら食べていたら、智史さんは手を止めて私をじっと見た。