それでも君が必要だ
とりあえず部屋に入ったものの、どこに居たらいいのかわからなくて、モジモジと立ち尽くす。
見回すと狭い空間のほぼ全域に書類が重なっている。
智史さんって整理整頓するの、下手なのかな?
……綺麗にお掃除したい。整頓したい。
なんて思ってしまった。
部屋の真ん中には大きなカバーがかけられた物体。
これって、ロボット?
智史さんは部屋の奥まで行くとブラインドをカシャッと開けた。一気に光が入って眩しさに目がくらむ。
「コート、脱ぐ?」
「あ、はい」
手を出されてそう聞かれたら、誘導されるようにうなずいてしまった。
うなずいたからには脱がなければ。
コートを脱ぐとまたひんやりした空気を感じる。
私がコートを脱ぐと智史さんはハンガーを手に取り、また手を出してきたから、渡してよいものかオロオロしながらコートを手渡した。
そして智史さんは当たり前のようにコートをハンガーにかけ壁のフックにひっかける。
「あの、……ありがとう」
「……?何が?」
「コートをかけてくれたから」
智史さんは不思議そうな顔をした。
「そんなの、普通でしょ?」
普通……なのかな?
私はそんなことをしてもらってことがないから、すごく優しく感じてしまう。
智史さんは首を傾げて自分のコートもフックにひっかけると、ツカツカと部屋の真ん中に歩み寄り、バサッとカバーを外した。
「これは実験用の試作機なんだ」
現れたのは、腕のような形をした二台の機械だった。
所々に緑色のテープが雑に貼ってあり、それぞれ不思議な形のまま止まっている。
智史さんは機械の曲がった部分を指さした。
「ほらっ!この部分。人間の関節みたいに曲がってるでしょ?こうやって幾つも関節があるから、多関節って言うんだ」
「あ、多関節……」
なるほどね。
『タカンセツ』って『多関節』だったんだ。
やっとわかった。
「垂直に立ち上がってる多関節ロボットだから、垂直多関節ロボット、ね」
「はあ、なるほど」
そういうことだったんですね。やっと理解できた。