それでも君が必要だ
おろおろする私を全く気にする様子もなく、智史さんはスッと長い指を伸ばしてタブレットに触れた。
「おはよう。今日は早起きだね」
『おはよ。なーんかね、早く起きちゃった』
あれっ?
タブレットから離れてお話している。もしかしてテレビ電話?
聞こえてきたのは女性の声……。
誰なんだろう。やっぱり恋人?
すごくドキドキする。
それに『おはよう』ってなんだろう。
今、昼なのに。
昼夜逆転しちゃってる人?智史さんと同じよう研究している人なのかな?
『智史、こんな時間にここにいるってことはフラれたってこと?』
お相手の女性、智史さんのことを智史なんて呼んでいる……。
お互いに名前で呼び合う仲なんですね?
はあ……。
苦しい。
私、やっぱりこの部屋にいたらいけないと思う。
場の雰囲気に耐えきれず静かに立ち上がると、智史さんは立ち上がった私を見て手を伸ばした。
「そんなわけないよ!美和さん、こっちに来て!」
嬉しそうに手招きする智史さん。
「エッ!?」
……いいんですか?
私、その方にお会いしたらいけないんじゃないんですか?
「早く早くっ!」
真意がわからず、せかされてものろのろと近づくと、智史さんは待ちきれないとばかりに私の手首を掴み、力強く引いて自分の体に引き寄せた。
あまりの勢いに足がもつれる。
「わっ」
転びそうになって目を閉じた瞬間、後ろから長い腕が巻き付いてぎゅっと抱き止められた。
「!」
いきなり力強く包み込まれた感触に驚いて、目を丸く見開く。密着した感触に息もできずピシッと固まった。