それでも君が必要だ

あのっ!
智史さんっ?
くっつき過ぎです。

ぴったりと密着した智史さんの胸や腕の感触、なんて言うか、すごい……。
智史さんって細いのかと思っていたのに、意外と筋肉質?

服の上からでも体つきが伝わってくる。
体温もじんわりと伝わってきて、猛烈にドキドキして目が回って、頭の中はもう真っ白……。

「ココちゃん、婚約した美和さんだよ。可愛いでしょ?」

こんなに密着しているのに、全く動じることなく顔をすり寄せるように私を紹介する智史さん。
耳の近くで響く声に、またビクッと息を止めて小刻みに震える。

智史さん、人前でこんなことをして、どうして平気なの?
まして、女の人の前なのに。

『こらこら!大丈夫なの?驚いてるよ』

「そんなことないよ、ねえ?」

どうしたらよいのかわからず、反射的にうんうんと首だけ縦に振る。

「ほらね」

『合わせてくれてるだけ!そんなことしたら嫌われるよ』

気が動転したまま声が聞こえてくる画面を見ると、そこには四十代か五十代くらいの綺麗な女性が映っていた。

年上の女性……!?
智史さんみたいに素敵な人なら、どんな年代の女性からも好かれるとは思うけれど。

智史さんは腕の力を緩めず、唇が耳に触れそうな距離で息を吸ったから、またビクッと首を縮めた。

「美和さん、紹介するね!ココちゃん。俺の母親だよ」

「……」

ん?

パチパチッとまばたきをする。

……えっ?
エエッ!?

お母さん?

思わず目を見開いてまじまじと見る。

とてもお母さんには見えない。

そもそも智史さん?お母さんの前でこんなことしていいんですか?

それにお母さんなのに「ココちゃん」なんて呼んでいるの?
ココちゃんってあだ名?それとも本名?

わけがわからない。
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