それでも君が必要だ
『あらいけない!そういえば、はじめましてのご挨拶もまだだったわね?智史の母です。よろしくね?美和ちゃん』
突然仕切り直すようにお母さんがにっこり笑った。
「は、はじめまして……。よろしくお願いいたします」
流されるままぺこりと頭を下げる。
お母さん……、とても綺麗な人。
智史さんのお母さんの存在なんて全然考えていなかった。
『ごめんねえ。この子、昔から強引なのよ』
「……はあ」
「強引だなんて誤解を招くようなこと言わないでよ。俺は惚れた女に一途なだけ!」
「!」
智史さん?何を言っているの?
そんなセリフ、息をのむ。
惚れた女、だなんて……。
どうしてそんなとんでもないことを言うの?
それもお母さんの前で!
あっ、でも……。
お母さんも会社の事情を知っているんですよね?
もしかして、二人とも私の前では無理をしてそういうふりをしてくれているのかな?
そう思ったら申し訳なくて寂しくて、たまらず腕の中から智史さんを見上げた。
二人は『そういうのを強引って言うの!』とか「違います!ココちゃん、わかってないなー」なんて言い合っている。
「あの……、そんなに無理をしなくても、いいのに」
「は?無理って、何が?」
智史さんの瞳は表情がなくなると一気に冷たくなる。
……怖い。
涙が出そう。
ビクビクしながらとぎれとぎれに言葉を出す。
「何って、その、無理にそんな、紹介しなくても……」
冷たい瞳をしているくせに、締め上げるようにぎゅうぎゅうと抱き締めてくるから、その度にドキドキして息が止まって、言いたいことがうまくまとまらない。
「嫌なの?」
『ほーら、嫌がられた!』
嬉しそうに突っ込む声が聞こえてくる。
それに対してムッとする智史さん。