それでも君が必要だ

社長さんの笑顔に癒されて、ほっと気持ちが落ち着く。

「お邪魔しています」

「うんうん、ゆっくりしてってね」

のんびりした社長さんの言葉に思わず笑顔になったら、智史さんは低い声を出した。

「……美和さん、親父に会えて嬉しそうだね」

「え?うん、まあ……」

智史さんがどうして急に不機嫌になったのかわからず首を傾げていると、社長さんはパタパタとタブレットの前に走り寄り、画面に手を振った。

「ココちゃーん!」

『テッちゃん!』

社長さん、嬉しそう。
二人は本当に仲のいい夫婦なんですね。

「おととい喋ったばっかだろ?」

『いいのっ!』

「智史、ちょっと場所借りるね」

「はいはい。ごゆっくりどーぞ。美和さん、こっちに来て」

智史さんに手を引かれ、部屋の外に出る。

とりあえず夫婦水入らず、二人きりにさせてあげるのかな?

「親父の部屋は電波が入りにくくてさ。それに、あの二人の会話を聞いてると耳が腐るからね」

「?」

耳が腐る?

「仲がいいのは良いことだけど、良すぎるのも考えものだね。こっちの身にもなってほしいよ」

「……はあ」

そんなに仲がいいんだ?
それって、とっても素敵なことですよね?

「あーあ。部屋、取られちゃったな。じゃあ、あんまり面白くないと思うけど、ざっくり工場の中でも案内してあげようか?」

「……うん」

工場を面白くない、なんて思わない。
周りを見回すと知らないものや見たことのないものばかり。

私、智史さんが何をしているのか知りたい。

見上げると、智史さんは私の手を強く握った。

「寒くない?コート、取ってこようか?」

「大丈夫」

私が首を振ると智史さんは微笑んで、誰もいない静かな工場の中をゆっくりと歩きながら、ここは資材置き場ね、とか、組み立てはここでやるんだ、とか説明をしてくれた。
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