それでも君が必要だ
それでも……。
たとえ嘘でも優しくしてくれる智史さんに胸が痛んだ。
「私にできることなんて、伝票処理くらいしか……」
そう言ったら、智史さんの会社の上半期決算が赤字だったっていう話を思い出した。
智史さん、その事についてもっと調べたいって言っていたよね?
私はまだまだ経理のことなんてわからないけれど、それでも少しは勉強したし、帳票を見たら何かわかるかな?
「それだけできれば十分だよ」
あははっと爽やかに笑う智史さんを見上げて、息を吸って切り出した。
「あのっ!」
「ん?なあに?」
「あの……帳票、見てもいい?」
智史さんは驚いた顔をした。
「いいけど、どうして?」
「えっと、智史さん、前にどうして赤字だったのか、わからないって言っていたから。見たら何かわかるかなと思って……」
それを聞いて智史さんは少し驚いた顔をして、それからフッと優しい瞳をした。
「早速俺を助けてくれるの?」
「そんな、助けるなんて大それたことでは……」
智史さんは私から視線をそらすことなくじっと見つめたまま、拳を口元に当てしばらく考え込んだ。
私、出過ぎたことを言ってしまいましたか?
「本当は、明日一人でやろうと思ってたんだけど……」
「?」
「手伝ってもらおうかな」
「……え?」
「コピー」
「……?」
私が首を傾げると、智史さんも同じ向きに首を傾げ、ニヤッと笑った。
「美和さんには本当のことを教えてあげる」
「本当のこと?」
なんだろう?
イタズラっぽい瞳。
智史さんは一度視線を下に向けて沈黙した後、視線を上げて私をじっと見つめた。
「実はね、今までお願いしてきた会計事務所じゃない、別の公認会計士に決算を確認してもらってるんだ」
「そう、なんだ?」
確かに、そういうのはちゃんと専門家の先生に見てもらうがいいと思う。