それでも君が必要だ
……あれ?
ということはつまり、智史さんは今の会計事務所は信用していないの?
「あの、今の会計事務所は?」
「今お願いしてるところはここ数年の付き合いなんだけど、動きが鈍いと言うか話を聞いてくれないと言うか。なんか物足りなくてね」
「そう……」
「それにさ、うちの経営状況を見てもらって、スイ技研に事業譲渡しないでこのまま経営していく方法がないのか模索したいんだよね。だから、今後の方針も含めた経営分析をお願いしてるんだ」
智史さん、いろいろ努力しているんですね。
それって父のせい、ですよね?
「父が事業譲渡しろ、なんて言うから……」
「いや、何がなんでも事業譲渡が悪いとは思わないよ?進み方が急過ぎて、どうしても納得いかないだけでさ……。美和さんが気にするようなことじゃないよ」
「でも……」
「まあね、そんな話を公認会計士にして貸借対照表見せたら、帳票全部見たいからこっそり全部コピーしてこい!なーんて言われちゃったんだ」
「……はあ」
こっそり?
しかも全部コピー?
それは……大変。
「だからコピーとるの、手伝ってくれる?」
「それは……もちろん」
コピーを取るなんてお安いご用です。
そのくらいでお役にたてるなら、いくらでもお手伝いします。
でも、隠れてコピーなんて。ちょっと罪悪感。
「……こっそりなんて、いいのかな?」
「いいのいいの!むしろ、バレないようにこっそりって楽しくない?俺は好きだなあ、こういうの!」
楽しそうに智史さんは書庫のガラス戸をガラガラと開けると、いきなり真ん中あたりからファイルを取り出そうとしたから、思わず「あっ!」と大きな声を出してしまった。